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生成AIの利用率95%以上を維持する仕組みのつくり方


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.【1】なにごとも目標を設定する
    1. 2.1.目標の重要性
      1. 2.1.1.何を(対象の設定)
      2. 2.1.2.いつまでに(スケジュール、期限)
      3. 2.1.3.どうするか(達成の状態の具体)
      4. 2.1.4.まとめると
  3. 3.【2】目標達成のための障害を取り除く
    1. 3.1.障害やボトルネックは取り除く
      1. 3.1.1.費用の問題
      2. 3.1.2.著作権まわりの問題
      3. 3.1.3.心理的な問題
  4. 4.【3】結果としてどんな感じになったか
    1. 4.1.瞬間最大利用率100%を達成
    2. 4.2.その後の利用率の変化と影響
    3. 4.3.継続して月間の利用率も95%を維持
    4. 4.4.詳しくはアンケート結果を直接ご覧ください
  5. 5.【4】考察
    1. 5.1.生産性の向上
    2. 5.2.創造性の向上
    3. 5.3.従業員の成長
  6. 6.お悩みご相談ください

こちらの記事はDIVXアドベントカレンダー2023の25日目の記事です。

はじめに

こんにちは。株式会社divxでCEOをしてる物部です。

DIVXは2023年の3月に、業務における生成AIの利用を義務化しました。あわせて親会社のdivを含めたグループ全体で、生成AIの利用率100%達成の目標を掲げました。集計方法によるところもありますが、無事に6月には瞬間最大風速では100%を達成し、現在でも日別で95%以上という高水準の利用率を維持しています。今回はなぜそれが達成できたのか、どうやったのかを、文字が多めになりますが、情報公開します。

【1】なにごとも目標を設定する

目標の重要性

個人でも会社でも、何かを行う際に目標設定を正しく行うことは大切です。全社員に対して「生成AIを使いましょう!」となんとなく呼びかけるだけで、十分に使うようになってくれることは無いでしょう。私は普段からマネジメントを行うことが多いのですが、目標設定においては以下のような項目の設定を普段から重要視しています。

  1. 何を(対象の設定)
  2. いつまでに(スケジュール、期限)
  3. どうするか(達成の状態の具体)

です。たったこれだけ。簡単でしょう。

何を(対象の設定)

みなさんもご存知の通り、生成AIはたくさんあります。テキスト生成系で有名なものは OpenAI の ChatGPT ですが、それ以外にも Google の Bard や Anthropic の Claude など、さまざまなものがあります。画像生成も Stable Diffusion や Midjourney や DALL E などがありますよね。弊社は比較的開発をすることが多いので、GitHub Copilot なども関係してきます。全てを網羅的に使えば良いという目標設定も可能だとは思いますが、組織においては何らかの共通項があったほうが情報やノウハウ共有面で有利です。

ゆえにDIVXでは、ChatGPT(もしくはそれと同等のAPIを利用したもの)と、エンジニアにおいては GitHub Copilot の利用を義務化することにしました。なおその他の生成AIを制限する排他的なものではありません。

いつまでに(スケジュール、期限)

期限の設定はどんな仕事でも必須です。ここに論点は無いと思いますが意外に設定せずに前進を続けるケースも多く、仕事の失敗の最大原因となり続けています。私は失敗したくないのできちっと期限を設定しました。なお達成不可能な期限を設定しても意味消失しますので、適切な期間は必要です。

ゆえにDIVXでは1Qの終わりである2023年3月に生成AIの義務化を内外に宣言したことになぞらえ、Quarterを目標のタームとして設定するのがちょうどよさそうだったので、2Qの終わりである2023年の6月に期限を設定しました。とりあえずでしたが。

どうするか(達成の状態の具体)

何をもって達成したかという状態が未定義だと、ゴールが存在しないのでクリアできません。マラソン大会を開催するのに距離を設定しないようなものです。ちょっと無理筋もありましたが、勢いをつけるためと、例外は無いというメッセージングを出したかったので、利用率は100%と設定しました。ただしこのとき設定したゴールは、2Qの間に一度でも利用したらカウントする感じでした。今考えると多少緩いですが。

まとめると

まとめるとDIVXは1Qの終わりの2023年の3月に次のQuarterである2Q(4月〜6月)の間に全社員がChatGPTを使用していることと、エンジニアには Github Copilot を業務で100%利用している状態にすることを目標に設定しました。

【2】目標達成のための障害を取り除く

障害やボトルネックは取り除く

目標に到達するための障害やボトルネックがあると、目標達成率はどう考えても低下します。
生成AIの利用のための障害は、早い段階で以下の項目に集約されると予測していました。

費用の問題

ChatGPTでもGithub Copilotでも、業務で使うための十分な量と時間を確保するには課金が必要です。これを従業員個人に負担をさせて利用率100%を目指すのではブラック企業になってしまうので、それは明らかに避ける必要がありますし、放っておいたら利用率は特殊なアーリーアダプター層の一桁%になるでしょう。ここはきっちりと会社負担とする方針を最初から打ち出しました。ChatGPTは当初は経費精算の形を採用し、Gihthub Copilot は当初から法人契約としていました。

それぞれ2000〜3000円くらいのレンジだと思いますので確定的に安いです。ここに費用対効果ガーとか言っちゃうとそこでスタックします。生成AIの利用率を高めたいのであれば今すぐ会社が費用負担しましょう。

著作権まわりの問題

DIVXは比較的クライアントワークを行うことが多いので、生成AIに入力をした情報が、生成AIの学習に利用されてしまうと、最悪の場合には情報流出等の問題に発展する可能性がゼロとは言えません。はやめにこのあたりはクリアにし、利用する従業員やクライアントの心理的障壁を低減する必要があります。

1. ITに強い弁護士事務所さんに相談をした

DIVXではITに強い弁護士事務所として定評のあるシティライツ法律事務所さんと何らかの契約を締結しており、困ったときや法務面での相談を毎度お願いしています。今回の件でも生成AIをクライアントワークに用いることについてのリスクや契約書の相談を生成AIの義務化とほぼ同じタイミングで行いました。最終的な判断はDIVXの経営側が当然行うものなので、責任は100%DIVXにありますが、法律のプロの見解を得ておくことはどのような事業でも行っておいたほうが良いでしょう。

2. 利用規約をかなり読んだ

生成AIの利用にあたり、ChatGPTの規約では情報が学習に用いられる可能性がありました。GitHub Copilotの規約もかなり読みましたが、現状では情報が学習に用いられることはないとのことでした。しかし、この点については定期的に確認し、変更がある場合は速やかに対応策を考えるようにしています。

3. ChatGPTは代わりになるものを結局つくった

ChatGPTの規約の問題を回避するためにDIVXでは結局ガワだけは別物の社内向けのChatGPTクローンを開発しました。裏側ではOpenAI API や Azure Open AI Service を叩くだけですが、一定の規約問題の回避ができます。これにより、クライアント情報の取り扱いに関する心理的障壁を大幅に減らすことができました。なお初期版の開発期間は1ヶ月程度だったので、そこまで難しいものではありません。現在でも独自機能のアップデートを繰り返しており、プロンプトの社内共有や、画像生成機能の追加など、利便性を高めています。ちなみにこのツールを作成したことにより、従業員ごとの利用状況も機械的に集計できるようになりました。

心理的な問題

生成AIの利用に対して懐疑的だった従業員も多くいました。信頼性を疑問視する従業員もいましたし、自分たちの存在意義が失われるのではないかと不安視する従業員もいました。

これらの心理的な問題に対しては、以下のような対策を行いました。

1. 義務化という大号令:従業員の不安に対しては大前提として、前例に乏しいことなのでいくら説明をしても効果的とは言えないと判断をしていました。習うより慣れろという視点で、とにかく使ってもらえればメリットが分かるという信念がありましたので、義務化という強い言葉を使って社命であると認識をしてもらったことが結果としては良かったです。

2. 日報による生成AIの利用状況の共有:DIVXでは全社員が読むslackチャンネルで日報を提出するルールがあります。ここに生成AIの利用義務化以降、「前日のAIによる業務改善または研究開発」という項目を追加しました。ここに流れる情報で同僚や別の部署の人達がどういう利用の仕方をしているか共有がなされる工夫をしました。それによりノウハウの共有や有用性の認識が進みました。

3. ワークルールへの追加:DIVXにはDIVXワークルールという、働く上での一定守るべき心構えやルールがあります。定期的にワークルールの達成度を人事部の組織開発チームが集計をしているのですが、ここにも「【仕事の生産性向上】ChatGPT等のAIサポートツールを最大限利用している」という項目を追加しました。つまりこれら生成AIを利用していないということは会社のワークルール違反であると認識をしてもらうことにしました。これも社命であるということの再認識と利用状況の集計に役立ちました。

【3】結果としてどんな感じになったか

瞬間最大利用率100%を達成

DIVXワークルールのチェックによる自己申告と、社内製のChatGPTクローンのユーザごとの利用度を集計した結果、無事に2023年の4月から6月の2Qにかけて、瞬間最大風速ですが利用率100%を達成することができました。すべての従業員が生成AIを利用したことになります。

その後の利用率の変化と影響

生成AIの利用を義務化して以降、全体的な業務効率の向上や、多くの新たなアイデアが生まれるなど、明確な成果を実感しています。しかし、それだけでなく、一部の従業員からは、生成AIの活用により自分のスキルが磨かれ、新たな発見があったとの声も聞かれました。これからも引き続き生成AIの活用を推進し、業務の質を更に向上させていきたいと考えています。

継続して月間の利用率も95%を維持

この記事を書いている2023年12月現在も、「1日1回以上生成AIを利用する」従業員は95%以上を維持しています。利用率の高さは、生成AIの効果と従業員の積極性を示しています。しかし、実際のところ、どの程度の効率向上や創造性の向上が見られたのでしょうか。その答えを得るために、私たちは全ての従業員を対象としたアンケートを実施しました。その結果はDIVXと生成AIとの相性の良さを明確に示すものとなりました。

詳しくはアンケート結果を直接ご覧ください

https://www.divx.co.jp/trend/ai/202310-report

【4】考察

生成AIの導入と利用により、我々の組織がどのように変化したのか、その結果として得られた教訓や知識を共有します。特に、以下の観点から変化とその影響について詳しく説明します。

生産性の向上

生成AIの導入は、我々の業務効率と生産性に大きな影響を与えました。業務効率が10%以上短縮したと回答した従業員が96%以上であり、中央値は30%台でした。また、従業員が生成AIを活用することで、特定のタスクを高速化するだけでなく、より複雑なクライアントとの折衝や、問題解決に時間とエネルギーを集中することが可能になったことがわかります。

創造性の向上

生成AIは新たな視点やアイデアを提供するための強力なツールであり、これにより従業員の創造性が刺激されました。プログラミングやSQLの作成など多岐にわたって生成AIが現場でフル活用されています。特に広報やマーケティングチームの活用は特筆するべき点があり、現在ではプレスリリースやLPにおいて、素案はすべて生成AIが作成しています。

従業員の成長

また、生成AIの活用は従業員自身のスキルセットと成長にも寄与しました。従業員は新たなツールを使いこなすことで技術的な理解を深め、自己のスキルを磨く機会を得ました。先輩社員に質問をすることはほとんどの場合で心理的な障壁がありますが、気軽に生成AIに質問できる点が、結果として従業員の成長に寄与したことがアンケートからもわかります。

お悩みご相談ください

もし生成AIの社内導入を考えている企業や、担当者の方がいらっしゃいましたら、お気軽にわれわれにご相談ください。ChatGPTのクローンツールの提供も可能ですし、導入時に気をつける点、組織文化の作り方も含めたご支援が可能です。我々の経験があなたの組織のAI化に役立つといいなと思っています。どんなことでもお気軽に。

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