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AI活用開発でPMが学んだ、判断の質を高める「なぜ」の聞き方

はじめに

半年前にプロジェクトマネージャー(PM)として初めてプロジェクトにアサインされました。PMとは、プロジェクトの進行管理だけでなく、関係者との認識合わせ、優先順位の整理、意思決定の支援などを担う役割です。

AIを活用した開発プロジェクトということもあり、チームの調査や実装のスピードは想像以上に速く、日々新しい成果物が積み上がっていきました。
一方で、この経験を通して感じたのは、AIによって開発が速くなるほど、PMの確認不足も早い段階で形になってしまうということです。

特に印象に残っているのが、あるデータを特定の形式で出力できるようにしたいという要望への対応です。
当初は指定された形式に対応することが目的だと捉えていましたが、業務フローを確認すると、本当に重要だったのは出力物が後続工程で問題なく扱えることだと分かりました。

この記事でわかること

この記事では、AIを活用した開発プロジェクトでPMを担当した経験から、特定の出力形式に関する要望への対応を中心に、以下の3点を振り返ります。

  • AIで調査や実装が速く進むことで、PMが直面しやすい課題
  • お客様との認識合わせで意識すべきポイント
  • 要望をそのまま機能化する前に確認すべき判断軸

本記事では、これらを「要望理解」「プロセス共有」「優先順位判断」の3つの視点として整理します。

これからPMに挑戦する方や、AI活用開発の進め方に悩んでいる方に向けた内容です。

3つの課題

① 要望の「裏側」を業務フローまで掘り下げられていなかった

そのプロジェクトでは、あるデータを特定の出力形式で書き出せるようにしたい、という要望をいただきました。

当初の私は、この要望を「指定された形式で出力できる機能が必要」と捉えていました。
そのため、まずはその形式に対応できる技術やツールがあるかを調査し、代替となりそうな方式も含めて比較・検証を進めました。

この調査や比較の過程では、AIを活用することで情報収集や候補の整理を短時間で進めることができました。
また、実装方針がある程度固まった後は、AIに要件を伝えて実装のたたき台を作ることで、実装自体もスピード感を持って進められました。

一方で、ここで難しかったのは、「何を作るか」がまだ曖昧な段階では、AIを使っても判断そのものは速くならないということです。
実装の方向性が定まっていればAIは大きな助けになりますが、そもそも要望の背景や業務上の目的を十分に理解できていない状態では、調査や実装の方向性もぶれやすくなります。

その後、業務フローをあらためて確認したところ、実際に重要だったのは「特定の形式で出力すること」そのものではなく、出力されたデータが後続工程で問題なく確認・調整できることでした。
つまり、当初指定されていた形式は手段の一つであり、目的を満たす方法は他にもあり得ることが分かりました。

結果として、大きなスケジュール遅延にはつながらなかったものの、すでに進めていた調査や実装方針の一部を見直し、後続タスクの進め方も調整する必要がありました。

振り返ると、最初に「なぜその形式が必要なのか」「誰が、どの工程で、そのデータを使うのか」「指定された方法以外でも目的を満たせるのか」まで確認できていれば、調査や検証の方向性をより早く絞れたはずです。

AIによって「どう実現するか」の調査や実装は速く進められます。
だからこそ、業務フローやお客様の意図をチーム全体で共有し、ずれた前提のまま検討が進まないようにすることが重要だと学びました。

② 実装前の調査・検討プロセスを共有できていなかった

お客様との認識合わせの中で、実装までに必要な工数や期間について認識の違いが生じたことがありました。
原因の一つは、IT領域に詳しくない方にも伝わる形で、実装前に必要な準備工程を十分に共有できていなかった点です。

例えば、新しい機能を開発する際には、技術調査、実現方法の比較・検討、開発環境の準備など、実装前にさまざまな作業が発生します。
AIを活用すると、コードの生成や実装作業そのものは短時間で進められる場面が増えます。
一方で、どの技術を使うべきか、運用上のリスクはないかといった調査・検討の工程はなくなりません。

むしろAIによって実装が速く進むように見える分、実装前の調査や方式検討に時間を使っている理由は、これまで以上に伝わりにくくなると感じました。
「AIを使えばすぐ作れる」という期待があるからこそ、実装前に何を確認しているのかを丁寧に共有する必要がありました。

当時は、「調査します」とだけお伝えしてしまい、具体的に何を確認しているのか、どの判断のための調査なのかを十分に共有できていませんでした。

定例ミーティングの場があったため、その場で「現在は候補となる方式を比較しており、後続工程で問題なく使えるかという観点で確認しています」といったように、調査や検証の目的も含めて共有できていれば、お客様にも状況を理解していただきやすかったと振り返っています。

その後は、チームメンバーからの助言もあり、開発全体のロードマップを用意しました。
例えば、次のような粒度で共有するだけでも、状況の見え方は大きく変わります。

フェーズ

お客様に伝える内容

調査

何のためにその調査をしているのか

方式検討

複数案のうち、どの観点で比較しているのか

実装

現在どの機能を形にしているのか

テスト

どのような観点で確認しているのか

フィードバック反映

どの指摘をどの優先度で対応するのか

専門的な技術用語ではなく、現在どのフェーズにいるのかを可視化することで、お客様にも進捗をイメージしていただきやすくなりました。

③ 優先順位を判断するための軸を持てていなかった

開発当初は、お客様からいただいた要望を順番に実装していく進め方をしていました。

しかし、AIによって実装スピードが向上すると、短期間で形にできることが増える一方で、新しい要望や改善案も次々と出てきます。
その中で、「どの機能を今作るべきか」「どこまで作ればまず価値を検証できるのか」を判断する場面が増えていきました。

ここで必要だったのは、単に要望の背景を理解することだけではありませんでした。
背景を理解したうえで、複数の観点から優先順位を決める判断軸が求められました。

当時の私は、その判断軸を十分に整理できていなかったため、その時々でいただいた要望への対応が中心になっていました。
結果として、プロジェクト全体として何を先に実現すべきかを、お客様やチームと十分にすり合わせられていなかったと感じています。

AIによって実装が速くなるほど、「作れるもの」は増えていきます。
しかし、すべてを同じ優先度で進めることはできません。
だからこそPMには、「何を作るか」だけでなく、「なぜそれを今作るのか」を説明できる判断軸が求められることを学びました。

この事例のような要望では、優先順位を考える前に、まず次の3点を確認すべきでした。

観点

確認すべきこと

学び

目的

なぜその形式・機能が必要なのか

要望された形式は、目的ではなく手段の一つだった

利用場面

誰が、どの工程で、出力結果を使うのか

出力後の使われ方を確認しきれていなかった

代替手段

指定された方法以外でも目的を満たせるか

業務フローを確認することで、別の選択肢も検討できた

そのうえで、複数の要望や改善案がある場合には、業務上の重要度、利用頻度、依存関係、検証のしやすさなどを見ながら、何を先に進めるべきかを判断する必要があると感じました。

AIで開発が速くなった分、「判断の質」がより重要になる

この経験を通して感じたのは、AIの活用によって、PMに求められる役割の重心も少しずつ変化しているということです。

DIVXでは、AIを活用して実装スピードを高めるだけでなく、業務や開発プロセスの中で「どこまで自動化できるか」「どこに人の判断を残すべきか」を考えることを重視しています。

AIは、情報収集や実装方針のたたき台作成などで大きな助けになります。
一方で、AIが出してくれる案をそのまま使うのではなく、お客様の業務背景やプロジェクトの目的に照らして確認することがPMの役割です。

チームの開発スピードが速くなるほど、PMには進捗管理だけでなく、「何を、なぜ、どの順番で進めるか」を整理し、関係者と認識を合わせながら判断する役割が求められると感じました。

今後意識したい3つの改善アクション

この経験を通して、今後特に意識して取り組みたいことが3つあります。

① 要望の背景まで深く確認する

要望を受けた時点で「なぜ必要なのか」「誰が使うのか」「どの業務で使うのか」を確認し、チームにも共有できる形で整理していきたいです。

要望をそのまま機能に置き換えるのではなく、業務フローの中でどのような価値を持つのかを確認することを意識します。

② 成果だけでなく、そこに至る過程も共有する

「何を実装したか」だけでなく、「何を調査し、判断しているのか」もあわせて共有していきたいです。
成果だけでなく過程を見える化することで、お客様にもプロジェクト全体の進捗をよりイメージしていただきやすくしたいと考えています。

また、自分だけで判断しきれない部分については、実装者にも早い段階で確認し、「どこを詳しく聞いた方がよいか」「技術的に前提が分かれそうな点はどこか」を相談するようにしたいです。

③ 優先順位の判断軸を共有する

いただいた要望を順番に対応するだけでなく、「なぜ今この機能を作るのか」を説明できる状態にしたいと考えています。

そのために、業務上の重要度、利用頻度、他機能との依存関係、検証のしやすさに加えて、「その要望は目的なのか、手段なのか」「代替手段でも目的を満たせるのか」といった観点も整理し、お客様やチームと優先順位の判断軸を共有していきたいです。

AIによって実装スピードが上がるほど、作れるものの選択肢は増えていきます。
だからこそ、PMとしては「早く作る」だけでなく、「今作るべきものを選ぶ」ことをより意識していきたいと感じています。

おわりに

AIによって開発スピードは確実に向上しています。
一方で、開発が速く進むからこそ、PMには「何を作るか」だけでなく、「なぜ作るのか」「どの順番で進めるのか」を整理する役割がより強く求められると感じました。

この経験で特に学んだのは、AIで「どう実現するか」の検討が速くなるほど、その前にある「なぜ必要なのか」の確認が重要になるということです。
要望された内容をそのまま機能に置き換えるのではなく、業務フローや後続工程での使われ方まで確認することで、調査や実装の方向性をより適切に定められると感じました。

まだ試行錯誤の途中ではありますが、要望の背景理解、検討プロセスの共有、優先順位の判断軸を意識することで、お客様との認識合わせやプロジェクトの進め方にも少しずつ変化が生まれてきました。

この経験が、AIを活用した開発に携わるPMの方や、これからPMに挑戦する方の参考になれば幸いです。