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『MCPサーバー開発大全』書評

はじめに

こんにちは、R&D部の久米です。

社内でもMCP(Model Context Protocol)の実装をする機会が増えてきたのですが、特に頭を悩ませるのが、「確率的に振る舞うLLMを含むシステムを、どうやってテストし、品質を保証するか」という点です。 「なんとなく動いているからOK」ではなく、エンジニアリングとしてしっかり品質を担保したい。 そんな実践的な知見を求めていたところ、ちょうど良い書籍が出版されたので、今回はその書評をまとめてみたいと思います。

書籍紹介

今回読んだのは、技術評論社から発売された『MCPサーバー開発大全 独自サーバーの実装から自動テストの構築まで』です。

著者:岡 翔子

監修:高山 洪銘、餌打 優太

出版社:技術評論社

発売日:2025.12.5

【概要】 

MCP(Model Context Protocol)は、LLM(大規模言語モデル)とツールを連携させる革新的なプロトコルとして急速に普及しています。MCPによって、AIエージェントに各種のタスクを任せることが現実になりました。 同時に重要性を増しているのが、自サービスのMCPサーバーを完備してAIフレンドリーにすることです。サービスやデータベースは「AIから使えるかどうか」によってその価値が大きく変わります。

本書はMCPの基礎概念からMCPサーバー開発のための環境構築、基本的な実装、複雑なドメインヘの応用、そして品質保証を扱います。書籍内では実例として、初歩的な天気予報サーバーや、実践的な社内ドキュメントサーバーを作成します。 また、著者が独自に考案した「4層テスト戦略」は、従来のAPIテストでは対応困難なMCP特有の課題に対する解決策を提示します。さらにはCI/CDおよび自動テストの構築という運用面まで、MCPサーバー開発のすべてを学べる1冊です!

【こんな方におすすめ】

実践的なMCPサーバーを作りたい方

自身や自社の持つデータ資源をAIエージェントに活用させたい方

LLMが介在するシステムのテストや品質保証に関心のある方

(※Amazonより引用)

テスト戦略についての気づき

個人的に、本書を読んで一番納得感があったのが、第5章で語られているテスト戦略についてです。

LLMを組み込んだアプリケーション開発では、「出力が毎回変わる可能性があるため、自動テストが難しい」という壁にどうしてもぶつかります。 「なんとなく動いているからOK」で進めてしまいがちですが、本書ではここに対して非常にロジカルなアプローチが提示されていました。

具体的には、テスト対象を4つの階層(レイヤー)に分けて考えるという戦略です。 詳細な定義は本書に譲りますが、要するに「従来通りの手法でテストできる確定的な部分」と「LLMが介在する確率的な部分」を明確に切り分けよう、という思想です。

「LLMがあるからテストできない」と思考停止するのではなく、単体テストやプロトコルレベルのテストで担保すべき領域と、E2Eで意味的な正しさを検証すべき領域を分ける。 この考え方は、エンジニアだけでなく、QA(品質保証)担当のメンバーと品質基準をすり合わせる際にも、非常に有用な「共通言語」になる気がします。 R&Dチームとしても、曖昧になりがちなAIプロジェクトの品質管理において、ひとつの指針として取り入れたいと感じました。

実装パターンとアーキテクチャの考察

実装面でも、いくつかのパターンについて興味深い解説がありました。

例えば、エラーメッセージの設計です。MCPにおいては、エラーメッセージもLLMへの入力(コンテキスト)になるため、適切に設計すればLLM自身がパラメータミスを修正して再試行できる、という視点は非常に参考になりました。

一方で、複数の処理をひとまとめにする「カスケード処理」の実装例については、少し考えさせられる部分もありました。 確かに処理順序をコードで固定化すれば確実性は上がりますが、ツール同士が密結合になり、個々の機能としての再利用性が下がってしまう懸念もあります。

例えば、特定のタスクに特化させるなら、コードでカスケードさせるよりも、Skills(サブエージェント)として切り出したり、知識参照が主目的ならRAG(検索拡張生成)のパイプラインに任せたりと、目的によってアーキテクチャを使い分けるのが良さそうです。 本書を読みながら、こうした「MCPサーバーでやるべきこと、やるべきでないこと」の境界線を考える良いきっかけになりました。

まとめ

今回は、『MCPサーバー開発大全』の書評をまとめてみました。

本書はサーバー実装のハウツー本としてだけでなく、LLMアプリの品質保証(QA)や運用設計を考える上でのガイドラインとしても非常に有用だと感じました。 実装を担当するエンジニアはもちろんですが、AIシステムの品質管理に悩むQA担当の方や、プロジェクトマネージャーの方にもおすすめできる一冊です。

チーム全体でこの本の内容を共通認識として持っておくと、MCPを活用したプロジェクトがスムーズに進められるようになるかもしれません。

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