
「修正に3営業日」を解消|3Dパース修正に生成AIを使って見えてきた使いどころ
はじめに
展示会ブースの設計において、3Dパースは完成イメージを共有するために欠かせないアウトプットです。
しかし、展示ブースの本質的な成否を左右するかというと必ずしもそうではなく、その役割は主に以下の2点に限られます。
- 関係者とのイメージ共有
- プレスリリースや告知など、社外向けのビジュアル素材
つまり、3Dパースは「本質ではないが、ないと困ることがある」存在と言えます。
今回はこの立ち位置を前提に、生成AIを使って3Dパース作成を試みた結果、「何ができて、何が難しかったのか」を整理します。
なぜ生成AIで3Dパースを試したのか
今回のプロジェクトでは、ベースとなるパースや最終的な仕上げは専門業者に依頼していました。
しかし、制作時期が繁忙期と重なったことで、以下の課題に直面しました。
- 修正依頼から納品まで 3〜5営業日 かかる
- 修正1回あたり 追加費用 が発生する
「グラフィック範囲を少し抑えたまたは増やした印象を見たい」「デザインを載せた雰囲気を確認したい」といった初期〜中間段階の細かな調整や方向性のすり合わせを、すべて外注で行うのは現実的ではありませんでした。
そこで、「認識合わせと判断を早めるための材料」として、生成AIを活用することにしました。
生成AIでやったこと・前提条件
行ったのは、既存のブース3Dイメージをベースにした修正案のラフ生成や、デザインを載せた場合のイメージ確認です。
ここで重要だったのは、以下のように用途を割り切ったことです。
施工用の図面と完全一致する正確なパースは求めない
あくまで「イメージの確認」「方向性の共有」に使う
この前提で活用すれば、初期検討における生成AIでの3Dパース修正は有効です。
検証結果:生成AIの「得意・不得意」
実際に試して分かったことを整理します。
得意なこと:雰囲気とバリエーションの確認
特に効果を感じたのは、「形が決まっているブースの表面デザイン変更」です。
ブースの構造やレイアウトが決まっている場合、そこにグラフィックを載せたり、色数を増減させたりした際の印象確認は、十分に実用的なレベルでした。
<実演例>
以下は、形の決まっているブースにバナーデザインの雰囲気を当て込んだ出力例です。

ブースのグラフィックデザインを各壁面ごとに単体で見ると、受けて側が想像する完成イメージに誤差が生じますが、3Dパースにグラフィックデザインを当てこむことで、関係者全員で統一されたブースイメージを持つことができます。何が違うのか、どう修正したいのか指摘もしやすいため、関係者内でのすり合わせがスムーズになり、判断スピードが大きく向上しました。
苦手なこと:正確性とゼロイチ生成
一方で、明確な限界もありました。
- 図面情報を完全に反映した正確な立体構築
- 寸法どおりの再現性
- 細部まで破綻のないクオリティ
特に、元画像がない状態で文章(プロンプト)だけをもとにゼロからブースを生成するのは、難易度が高いと感じました。
<実演例>
平面図と参考画像を元に修正前後での差分を出力させたのち、立体的なブースを生成しようとしたが、図面の意図した通りの出力には至らなかった例です。

この後も、修正の指示を何度か投げて調整を試みたものの、意図通りの出力にはなりませんでした。
まとめ:生成AI活用の勘所
今回の所感をまとめると、以下のようになります。
【得意】
- 既存ブースへのグラフィックデザインの載せ替え
- デザインの印象や情報量の違いによる比較
【苦手】
- 正確で破綻のない3Dパースの作成
- 図面ベースでの厳密な立体再現
結果として、グラフィックデザインの認識合わせや方向性検討における修正を外注せずに社内で完結でき、1回の修正3営業日という待ち時間と修正費用を大幅に削減できました。チームや業者間のやり取りもシンプルになり、プロジェクト全体の効率化につながりました。
おわりに
今回の3Dパースにおける活用のように、得意・不得意を理解したうえで使えば、実務の判断スピードと質を確実に引き上げてくれるツールです。

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